教室バロック
―― ハルトさんとの連絡は
結局、十日経っても取れず
オレは単独、新宿北口へと降りた
首に 汗が流れて来て
伸びて来た髪を、後ろで結んだ
鉄筋を叩くボーリングの音
青い空
その下に低く絡む、黒い電線
古いビルを昇って、
丸いインターホンを押す
錆び付いたドアの中からは、反応がない
―― ドアに鍵はかかっていなくて
窓からは斜めに射す、白っぽい光
何の匂いもしない
コンクリートの部屋の中は
正真正銘の
『 がらんどう 』に なっていた