教室バロック





「 ね …旅行会社との癒着とか…? 」

やけにリアルな事を
こそこそと話す女子達


「 こおら!
小、中は、広い世界を見る為に海外

高校は、
日本の伝統の良さを知るって事で
学園長がお決めになったの! 」


ザワザワと、生徒達が集合している
赤いカーペットのホテルのロビー

全面ガラス張りの窓の外には
紅葉を始めたモミジと
白い石を敷き詰めた庭
そして、石灯籠



「 花さん それにさあ
なんで制服なわけえ?
普段どっちでもいいじゃあん 」

「 私服だと町の中で
見付けにくくなっちゃうでしょ!

ほら!柏先生いらっしゃったから
きちんと列んで! 」



確かに小さな頃から
家族で海外旅行をしたり、
別荘を持っている奴らが殆ど

だからこそって言う意図はよく判るし

それに皆も
口じゃイロイロと言ってるけど
実は相当、楽しみにしていた



期間は五日
新宿から観光バスに乗って東京駅
新幹線で、夕方近くに到着



海外の
派手な景色を見慣れているハズの奴らも
朱色の夕日に照らされる
黒い山並みをバスから降りて眺めた時

しばらくずっと、その風景を
黙って見つめたままだった




珍しくネクタイをしめた柏が
二年生全員の前で、注意事項を繰り返す


柏の背にある壁には
一面を埋める 金のデカイ額縁

満開に画面を染めた、桜の木だ







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