教室バロック
橘が叫んだ先には
おしろいを塗った真っ白な肌を、
薄明るい闇に浮き立たせて
胸の前に小さな包みを抱えるキモノ姿
「 …すげえ若くね?! 」
「 オレらとあんま変わらないかもなあ 」
「 ちょっ 写メ撮りたい!! 」
「 ななな!声かけるか?! 」
「 なっ 何て声かける?! 」
「 そりゃ決まってんだろ!! 」
「 え?!何て言う?! 」
しばらく耳打ちし
皆『 それがあったか! 』と笑い出し
一斉に口元に手を添えて叫んだ
「 … せーーのっ!!
舞妓SAAAAAAAAN!! 」
赤い振り袖をくるりと揺らして
向こうを向いていた結い髪がこちらを向く
声のヌシがオレらと確認すると
かんざしの花を傾けて
赤い唇は笑い、ピースサインを出して来た
「 おお!ノリがいいぞ?! 」と
皆、一気に駆け出して
『写メ撮らせて下さ〜い!』
口々に『 カワイイですねえ! 』と接近
「 おおきに 修学旅行どすか?」
そう舞妓さんが、ニッコリ笑い
周りを囲む奴らが
『 京言葉ヤベエ!!』と唸る
周囲にいた観光客の人も盛り上がって
写メ大会に参加しはじめた