教室バロック




「 もう一枚着て来なくてよかったか? 」


「 うん 平気 」





夕暮れの川沿いを歩いて
小学校の時、
一緒に釣りに来た時の事を話した


駅前までずっと続いていて
先は、海へと流れてる



潮の匂いの中

駅前商店街は、人の波



自転車の荷台に、スーパーの袋を積んで
勇ましく滑走していく姿や

少し値下げされた
店頭ケーキ販売の列に並ぶカップル



父親の後をついて行くと

あまり予想だにしない暖簾の下を
くぐって行った







「 おまちどうさん!! 」



――― いつも
良い匂いがしてるなあと思いつつも
入った事はなかった



セルフの水と
壁に貼られた
カンタンに書かれているメニュー


「 父さんはきつねそばにする
空哉は? 」


自販機から出て来た食券を
煙のあがるカウンターに出して、
嬉しそうに待つ横顔


オレは、たぬきうどんにしてみた




父親は常連らしくて
『 クリスマスだから 』と
店主の親父さんが
タマゴを一個づつくれて

それを二人で、笑いながら割った







< 79 / 287 >

この作品をシェア

pagetop