教室バロック
「 もう一枚着て来なくてよかったか? 」
「 うん 平気 」
夕暮れの川沿いを歩いて
小学校の時、
一緒に釣りに来た時の事を話した
駅前までずっと続いていて
先は、海へと流れてる
潮の匂いの中
駅前商店街は、人の波
自転車の荷台に、スーパーの袋を積んで
勇ましく滑走していく姿や
少し値下げされた
店頭ケーキ販売の列に並ぶカップル
父親の後をついて行くと
あまり予想だにしない暖簾の下を
くぐって行った
「 おまちどうさん!! 」
――― いつも
良い匂いがしてるなあと思いつつも
入った事はなかった
セルフの水と
壁に貼られた
カンタンに書かれているメニュー
「 父さんはきつねそばにする
空哉は? 」
自販機から出て来た食券を
煙のあがるカウンターに出して、
嬉しそうに待つ横顔
オレは、たぬきうどんにしてみた
父親は常連らしくて
『 クリスマスだから 』と
店主の親父さんが
タマゴを一個づつくれて
それを二人で、笑いながら割った