仮想世界に生きる少年
「却下するわ」







「どうして…」








「サーバの許可はしないわ」







「頼む」






「…」









辻本は黙りこんでしまった。













俺は助けを求めるために伊藤を見た。





伊藤も分かっているのだろう。





俺にあいずちを打ち、話し始めた。









「俺からも頼む。もう一度中身を見せてくれ」





「ダメといったらダメなの。
サーバへのアクセスによって『W』の全ての情報を流出することになる。
それだけは避けたいの」











俺は困ったことになった。





俺が無理でも伊藤ならなんとかしてくれると思っていたからだ。













次の手を考えていたが、それの手を使うしかなかった。






使いたくはなかったが…






「辻本、十年前の約束を覚えているか」






「…」







「俺は一つ辻本に貸しを作っている。それを今ここで使わせてもらいたい」






「卑怯よ…そんなこと」






「約束は約束だ」






「それでもダメ…」











俺の策も残りわずかだった。











俺は最後の策を使うしかない。
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