仮想世界に生きる少年
「…おかしいと思う」









「我々は資源の矛盾を回避するために人々の能力の一部をエネルギー発生装置にすることにした。
その結果、資源には何の影響もでていない」










「完璧な世界を造ったことになるわけか…」












「だが、一つのバグが我々の造った世界に混乱をもたらした」











「…バグ」












「それが君たちの知っている『神』なんだ。
我々の理想では『能力』と『勉学』のバランスの取れたものにする予定だった。
だが、突然変異の『神』が現れて予定が壊れてしまった」











「緊急事態ってやつか…」












「予測していなかった。
いいや、起こるはずがないんだ。
だが、起きてしまった。
『神』と呼ばれた者は世界をすさまじい速度で急成長させた上に、『能力』と『勉学』のバランスを修復不可能な状況まで破壊した。
我々、管理側の人間はこの状況を改善するためにシステム内部にアクセスした。
我々、管理側は歳を取る。世代ごとに、親から子へと引き継がれていく。
限られた食糧の中、暗闇の中で保管された人々のために一生を過ごさなければならない。
そんな中でのアクセスだ。
我々は仮想世界に入ったことで対立が起きてしまった。
それほどまでにこの仮想世界は素晴らしいものだったんだ。
まるで夢のような世界だったんだ。
世界が明るく、食事も好きなだけ取れる世界に…」

















「現実と非現実のギャップか…」
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