仮想世界に生きる少年
15. 契約
言葉は信じない。






人の感覚には五種類ある。



視覚、聴覚、味覚、触角、嗅覚。




この中で情報の多い視覚で80%で、次に多いのが聴覚の12%とされる。





聴覚からの情報は信じない。





けれども、視覚から見たものは信じられる可能性があった。




評論家のように客の喜ぶ言葉を言い、人気を集める奴らの言葉よりも、自分の目で見たものの姿で真実の可能性を見ることの方が信用できる。














俺は帰り道、伊藤に「参加する」と言った。




伊藤は「ありがとう」と言った。






「山本に頼みがあるんだがいいか」


「なんだ。今後のビジネスパートナーとしてなんでもやるぞ」


「ミコトを必ず参加するようにしてくれ」


「神山か…。どうしてだ。そんなにシンボルが必要なのか」


「いいや。ただ、仲間が多い方がいいと思ってな」


こいつは嘘を言っているだろう。


「わかった。明日神山に言う」


「頼んだ。それから条件が一つある」


「なんだ」







「本気で口説かなくっていいからな。軽くでいい」





「どういうことだ」





「失敗前提で相談してくれ」





「意味がわからない。なんで失敗前提で俺が動かないといけないんだ」






「俺は昔からあいつを知っているんだ。たぶん一回だけじゃあ、動かないだろう」





「伊藤がいうなら、仕方が無い。失敗前提で口説いてみる」
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