仮想世界に生きる少年
「親父…俺に何のようだよ」



父親は何も答えたい。考えているのだろう。



「タクヤ…お前に話したいことがある」


「なんだよ。俺は忙しいんだ」



「私の仕事は製品の開発会社だということは知っているな」



「ああ、そこの幹部をしているってこともな」



「先日、会議である議題が出たんだ。
『W』という組織に会社が協力するかどうかというものだ。
私は『W』という組織の実態を把握していないが、会社の成長、つまり発展をするには『W』に協力することが重大だと言われた」



「親父の言いたいのは国や外国の会社と協力するよりも『W』と協力した方がメリットが大きいっていうんだろ…」




「だが、デメリットも大きいんだ」





「デメリットは国のやつらに掴まるってことだろ」







「違う…家族だ」






「…」





「大きな選択なんだ。一種の賭けかもしれない。だが、『W』と手を組めば、今後の成長に大きな進歩がある」




「驚いたなー。親父が家族のことを思っているなんてさ」







「私が仕事をしているのは仕事が楽しいわけじゃないんだ。
家族に暮らしやすい環境を提供するために必死に仕事をした。
でも上に行けばいくほど家族との時間が無くなった。
お母さんも結婚当初は会社を辞めると言っていたが、部下を見捨てることができず、社長をまだ続けている状態だ。
タクヤには今まで一人にしてきたが、家庭を守るには働くしかないんだ」
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