仮想世界に生きる少年
俺はこんな困った顔をする父親を見たことがない。






「タクヤ、お前はこの国から出ろ」





「ハッ…」







「今日の会議で『W』と協力することになった。
つまり、いつお前が国に掴まるかわからない。
今のうちに『ヘブン』から逃げるんだ」





「馬鹿言うなよ」






「『W』が協力したいなら、条件が一つあると言われた。
その条件が『会社を貸せ』というものだ」






「乗っ取るってことか」






「いいや、本社を使って何かをするらしい。国を動かすほどの…」








親父は俺に初めて頭を下げた。





「タクヤ…お前だけでいいから…逃げてくれ」







俺はそんな父親の姿を見て、悲しくなった。
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