仮想世界に生きる少年
俺は伊藤を見た。少し老けたな…







「おう」









伊藤は椅子から席を立ち、俺の方へ歩いてきた。



俺に握手を求めた。




俺は応じた。








「元気そうでなによりだ」



「そうかぃ。
無線で連絡していたから十年ぶりに再会しても実感がないな」


「そうだな」






俺は手を離し、リュックから船で作ったレポートを出した。



「これは…」



「これまでの報告書だ。
俺の十年間の記録をまとめたものだ。
受け取ってほしい」


「ああ、だけど神山を通じて報告書は毎回届いているぞ」



「いいんだ」



「…わかった」










伊藤は俺のレポートを受け取り、机の上に置いた。





「そこのソファーに座れよ。
立っていると疲れるだろ」








「そうするわ」








俺はソファーに座り、伊藤もソファーに座った。








「さてと…、本題に入ろうか」








伊藤が俺の顔を見た。












「『Xファイル』は見つかったのか」




「いいや…」



「そうか」




「だが、やっと手掛かりが見つかったところだ」





「あと、どれぐらいで手に入るんだ」




「もうすぐだ。俺の予想が当たっていればね」




「予想…か」




「ああ…」







伊藤は下を向いた。






ガッカリしていると言葉を伝えなくても伝わってきた。








「今回、俺がこの国に戻ってきたのには理由がある」
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