gently〜時間をおいかけて〜
病院を出ると、冷たい北風が俺の頬に当たった。

立っているだけでも氷になってしまいそうだ。

「――莢…」

莢は、元気だろうか?

彼女に連絡もしないで、俺は黙って出て行った。

莢は今、何をしているのだろうか?

ちゃんとご飯を食べているのだろうか?

莢の手料理がまた食べたい。

「――莢…」

莢に逢いたい。

顔が見たい。

「――莢…」

そう思った俺は、ポケットから携帯電話を取り出した。

莢が生きている時代に、時間よ戻れ。
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