gently〜時間をおいかけて〜
そっと、壊れものを扱うかのように唇が触れた。

そして、離れる。

「――わた、る?」

今、何が起こったのかわからなかった。

航が、あたしにキスをした…?

それに対して、あたしは状況が全く読めなかった。

「――母親だって言うのにね」

航が言った。

「えっ?」

「――親子だって言うのに…。

生きているところが違うって言うのに…」

航は独り言なのかと思うような口調で、淡々と話した。

何が言いたいのか、よくわからない。

「――どうして俺たちは、好きになったんだろう?」
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