gently〜時間をおいかけて〜
莢は何故か、真っ白な顔をしていた。

「今、父親と話してたんだ。

今夜は泊まるから帰れないって言って」

「帰っちゃうの…?」

小さな声で、莢がそう言った。

えっ…?

俺は耳を疑った。

そこを聞いていたことに、ビックリしたからだ。

「――航、明日帰っちゃうの…?」

震えた声でもう1度言った莢に、俺は目をそらすように伏せた。

「そりゃ、帰るに決まってるだろう。

いつまでもいられまい」

俺は言った。

我ながら、ひどい言い方だ。
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