gently〜時間をおいかけて〜
初めての相手がまさかの母親だけど、そんなことは気にしなかった。

ちゃんと愛しあってるから。

愛しあったうえで、彼女と結ばれているのだから。

莢の目から、涙がこぼれ落ちた。

涙さえも愛しくて、俺は指でそれをぬぐった。

莢が俺の背中に両手を回した。

同じ体温――このまま溶けて行けたら、どんなに幸せなことなのだろうか?

莢と一緒に死ねると言うのなら、それはもう本望だ。

俺は莢の背中に手を回して、抱きしめ返した。

「――莢…」

耳元で名前を呼んだ。
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