gently〜時間をおいかけて〜
冬の朝は、どうしてこんなにも暗いのだろうか?

日がのぼる時間が、どうしてこんなにも遅いのだろうか?

「どうしてなんだろうな」

そう呟いた後、莢に視線を向けた。

彼女はよく眠っていた。

そろそろ、帰らなければならない。

未来の世界へと戻らなければならない。

本当は、もう少しだけ莢と一緒にいたい。

でも、
「――本当に帰る時が、つらくなる…」

だから、今すぐに帰らなければならない。

「――莢、愛してるよ…」

そっと、俺は莢のキレイな黒い髪に唇を落とした。
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