gently〜時間をおいかけて〜

gently1.5〜航目線〜

小さな部屋に響くのは、規則正しい呼吸音だけだった。

ベッドに視線を向けると、莢が眠っていた。

俺は来客用のふとんの中で、彼女の眠っている横顔を見つめた。

枕が変わってしまうと眠れなかった。

こんなデリケートな体質は、母親――莢の体質そのものである。

顔立ちも、性格も、全て莢譲りだ。

父親に似ている箇所なんて、1つもなかった。

いや、似てなくてもいいか。

いつも仕事優先で、家庭はその次の父親に、似てなくてもいい。

むしろ、似なくて大歓迎だ。

仕事でいない父親の顔は、いつの間にか忘れてしまっていた。

代わりに思い出すのは、思いつめたような莢の顔だった。
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