gently〜時間をおいかけて〜
当たり前のように家のことをこなすその裏の顔は、いつも離婚のことばかりを考えていた。

俺のすぐ横で眠っている莢の顔は、若くてキレイな顔立ちをしていた。

うっかり触れてしまったら、そのまま消えてしまいそうだ。

けど母親の莢は、いつも疲れたような顔を浮かべていた。

横にいる若い頃の彼女とは、程遠い顔である。

その疲れた顔で、夫との離婚に向けて準備を進めていた。

困らない程度にお金を貯めて、弁護士事務所に行って弁護士と離婚について相談して、ハローワークに行って就職先を探している。

俺が知らないなんて思っていたら、大間違いだ。

そんなことは、気づいていた。

当の昔に、わかっていた。
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