gently〜時間をおいかけて〜
少しの沈黙の後、
「起きた時、莢がいなかったからビックリしたんだ」

悲しそうな声で、航が言った。

「…そう、それはごめんね。

手紙の1つくらい書いておけばよかったよね?」

「いや、いい。

莢がどこにも行ってないんだったら、それでいい」

「航…」

あたし、航にかわいそうなことをしちゃったな。

手紙くらい書いておけば…いや、航に一言くらい声をかけておけばよかった。

そうすれば、航はこんなにも不安がらなくて済んだはずなのに。

「――ごめん…」
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