gently〜時間をおいかけて〜
「おいしーい♪

後で取りに行こう!」

ニコニコと笑っている莢に、俺はホッと胸をなで下ろした。

そう言えば…と、俺は思った。

こうして誰かと一緒にご飯を食べるのは、何年ぶりのことだろうか?

いつも1人の飯が当たり前だった。

誰かと一緒に食べた記憶は…正直なことを言うと、覚えていない。

ずーっと昔過ぎて、覚えてない。

いや、忘れてしまったと言った方が正しいかも知れない。

冷た過ぎると言ってもいいと言うくらいに、俺の家は冷え切っていた。

父親は仕事で家にいないのが当たり前だった。
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