gently〜時間をおいかけて〜
三島くんはピカピカの教科書を広げると、ノートに何やら書き写していた。

あたしはそんな彼を横目で見ながら、つまらない先生の話に耳を傾けた。

とりあえず黒板の文字をいつでも書き写せるように、指の間にシャーペンを挟んでおく。

退屈過ぎる話にあくびをかみ殺しながら、横目で三島くんを確認した。

彼はカリカリとシャーペンを動かしていた。

勉強家とは、彼のことを言うんだとあたしは思った。

あたしには到底無理なことである。

何にもないし、通っていてもつまんないから大学を辞めようと考えるのは、もう何回目だろうか?

しかし、辞めたとしてもどこに就職しようか。

この不景気に就職先を探すのは、無理過ぎる話である。
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