gently〜時間をおいかけて〜
うずくまって、小さな躰を震わせている男の子がいた。

男の子から少し離れた場所にあるのは、丸い背中だった。

人生の全てに絶望したと言うように、その背中からは疲れがにじみ出ている。

もう生きて行くのが嫌だと、言っているようにも思えた。

背中は、男の子に気づかない。

気づくこともなければ、男の子を見ようともしない。

――どうして…?

聞こえてきた声に、視線を向ける。

さっきまでうずくまって泣いた男の子が、赤い目をあたしに見せてきた。

その顔を見た瞬間、
「――航!」

あたしは名前を呼んだ。
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