gently〜時間をおいかけて〜
自分の声に驚いて、ハッとなって飛び起きた。

そこに広がっていたのは、いつもの風景だった。

あたしの部屋だった。

真っ暗だけど、ここはあたしの部屋だ。

「――夢か…」

夢だったのかと思った瞬間、力が抜けて行くのを感じた。

「莢?」

その声に、視線を向ける。

「――航…」

ふとんをかけた姿で躰を起こしている航と目があった。

真っ暗な中でも、航の整った顔はよく見えた。

それにもホッとして、涙腺がゆるんで行くのがわかった。
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