gently〜時間をおいかけて〜
そんなことを聞いたあたしに、航は何か言いたそうな様子で視線を向けてきた。

「何だろ…。

誰かと同じふとんで寝たことないの?」

あたしが聞いたら、
「ない」

そう返事した航の答えは早かった。

「ふーん」

あたしは返事を返した。

「莢が初めてだよ、同じふとんで眠ったの」

そう言った航に、
「そう」

あたしは言った。

初めて、か…。

本当に、航は複雑なところで育ったんだとあたしは思った。

その複雑なところと言うのは、あたしなんだけど。
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