gently〜時間をおいかけて〜
そう思っていたら、
「しばらく出たくないかも」

航が言った。

「ここから、一生出たくないかも」

「そうだね、今日も寒そうだもんね。

あたしもできれば、今日はここから出たくないかも」

窓の外に視線を向けると、ガタガタと窓ガラスが激しく揺れていた。

耳を澄ますと、ゴウゴウと風の音がした。

今日は相当なまでに風が強い日らしい。

「莢がいるからかな」

航が言った。

えっ?

そう言った彼に、あたしは耳を疑った。

今、何て言ったの…?
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