いつかのMerry Xmas
「その記憶喪失体質」

「――馬鹿にしてんの?」

そうだとしても、もう、この体勢からイチローを払いのけるほどの力、わかないけど。

「いや、感謝してんの」


どうせ、忘れるでしょ、と。
イチローが私の頬にキスをする。


そして、一言、「おやすみ」と、それはそれは優しい声で囁いた。


それは、まるで、大切な恋人にでも囁くかのように、甘い声だった。

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