ひざまくらの後は?
「勉強が出来なくても、表彰されなくても。あんたはその真っ直ぐで素直な性格と健気で愛嬌のある行動がみんなを惹きつけるのよ」

「そ、そんなこと……」

「おじいちゃんはいつも天音を散歩に連れて行って、たまにオヤツを買ってくれてたし。天音が中学のときに連れてきた小諸くんと、諏訪さんも」


結局、みんな天音を選んでいる。


「小さい頃からあんたはそうやって周りから可愛がってもらっていた。でもそれが出来ない私は、勉強や運動を頑張ってもっと褒めてもらうしかなかった」

両親の注目を天音から自分に移すのに、ずっとそうやってきた。

「そんな天音がずっと羨ましくて憎たらしかった。だから意地悪しようと嫌なことをしてきたのに、あんた全部私に譲るから」

「おね、え……ちゃん」

再びじわっ天音の瞳が潤んだ。
だけど、その水分が頬を伝うことはない。

「余計にこっちが惨めになるのよ」
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