未提出課題
 

「とにかく、今日から毎日放課後にここへ課題をしに来い。」
 

「ここへ?」
 

「そうだ。ちゃんとすれば単位も出してやるから。」
 

 
中野は、いくつあるのか分からない程ある瀬沼桃の課題の中から、理科の課題だけをピックアップした。
理科だけでも五つ程ある。
 

 
「しかし、よくここまで溜めたな。」
 

「……。」
 

「頑張ってくれよ。」
 

 
瀬沼桃は平たい鞄の中からペンケースを取り出して、おもむろに課題をし始めた。
中野は満足そうに溜め息を吐くと、その他の生徒の成績を出す為に、沢山の数値をコンピュータの画面上にあるシートへ入力してゆく。
 

理科準備室に、コンピュータのキーボードを叩く音と、紙の上を走る筆記用具の音とが響いていた。中野は時折コーヒーを飲んだ。それは既に冷めている。
 

 
「瀬沼、俺は今から少し職員室に行ってくるから。ちゃんと大人しく課題を続けていろよ。」
 

 
黙ったままだったが、中野の言葉に瀬沼桃は素直に頷いた。
 


 
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