未提出課題
 

「全くっ……、どこ行ったんだ。あの問題児め。」
 

 
中野は慌てて、再び理科準備室を飛び出した。瀬沼桃がどこへ行ったのか、検討はつかないが探して連れ戻すしかない。
ペンケースはおろか、鞄まで放り出したままなのだから、きっと戻ってはくる。
 

中野はキョロキョロと辺りを窺いながら、瀬沼桃の姿を探した。
 

 
「くそ、いないじゃないかっ……。」
 

 
大きな独り言が閑散とした廊下へ響く。それがとてつもなく寂しい。
 

結局暫くして、中野は瀬沼桃を捜すのを諦めた。鞄があるのだから、きっと戻って来るだろうと思ったからだ。
そこまで考えてハッとした。
 

もしかしたら、自分がいない間に上手い具合に鞄を取って帰ってしまったかもしれない。
 

途端に慌てて、中野はまた理科準備室まで走った。
 

戻った理科準備室には、ペンケースも鞄もあった。
あろうことか瀬沼桃も、戻って来ていた。
 


 
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