‡いとしきみ‡
「おじゃましまーす…」
 
 
家に着いたと同時に、そわそわし始めた美紀。
 
 
「そんなに緊張しなくても誰も居ねぇから大丈夫だって」
 
「…え?誰も居らっしゃらないの?」
 
「だから自由にしてていいよ」
 
「うん…」
 
 
急にまた黙り込んでしまった。
…女って分かんねーな。
 
 
部屋に入ると、
 
 
「化粧直して来るね」
 
 
慌てて化粧ポーチをカバンから取り出し、洗面所へ走って行った。
 
 
『さっきまで、化粧はげまくりの顔見てたっつの』
 
 
1人残された部屋で、自然と笑みが零れた。
そんな美紀を、可愛いと思った。
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