‡いとしきみ‡
結局、母親の趣味を押し切り、普通のスーツに決まった。
寸法を計って貰い、後日取りに行く事になった。
 
車に乗り、チラリと助手席を見れば、ブスッとした顔のおばさん1人。
いや、まぁ母親なんだけど。
 
 
「いい加減その顔なんとかしてくんねぇ?」
 
「…地味。あーあ。あんたが女の子だったら良かった!」
 
 
今更そんな事言われたって無理だろ。ついてるモンはついてるし。
 
 
「振り袖一緒に選びたかったぁ」
 
「いい年して駄々こねないで下さい。振り袖なら美紀の見ればいいじゃねーか。式の前に家来るっつってたし」
 
「美紀ちゃん?」
 
 
…そう言えば、付き合い始めたの言ってなかったわ。
 
何度か家に来ていたので、美紀と母親は面識がある。始めて連れて来た時に、付き合ってるのか聞かれて、そんなんじゃないと答えた。
 
母親はその時、とても寂しそうな顔してたのが記憶に残ってる。
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