‡いとしきみ‡
家に着いた。
今だに色々と聞いてくる母親の言葉を、右から左へと受け流し、2階へ上がる。
 
 
『疲れた…』
 
 
ドッと疲れた気がする。
ベットに転がろうと布団をはぐると、先客が居た。
 
ぬくぬくと気持ち良さそうに寝ているそいつ。
 
我が家に来て、もう2年経つそいつ。
 
 
「キナコ〜。お前また必殺技使ったんか?」
 
 
必殺技とは、大袈裟だが、キナコが俺の部屋の前で、“入れて”とニャーニャー鳴いていた事が多々あったらしく、それでも入れてくれないからか、ある日、ジャンプして勝手にドアを開けるという、特技をあみ出した。
 
あの時は本当に驚いた。
寝ていて、目が覚めると目の前にキナコが居た。
入れた覚えも無いのに、だ。その時は、母親か誰かが開けてやったのかと思ってたけど。
 
数日経って、ドアが開き、キナコだけが入って来た時は、テレビのペット番組に投稿してやろうかとも思ったっけ。
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