‡いとしきみ‡
「初め…まして……」
 
 
その言葉を言ったっきり、キナちゃんは黙った。
…黙ったっていうのは、少し違うか。
 
“言葉を発するのも忘れて、俺をガン見してる”
 
と言う表現の方が、しっくり来るだろうか。
何なんだ?一体。
 
そんなに稔の友達が“俺”だった事に驚いたのだろうか?
 
いたたまれなくなって、俺は目線を下に逸らした。
何だってそんなに見てくるんだ?
 
 
2年前のあのキナちゃんとは、全く違う雰囲気だ。
2年も経てば、やはり変わるものなのか…。
 
と、考えていたら、
 
 
「何処かで会った事ない?」
 
 
とキナちゃんから発せられた言葉で、俺は正直泣きそうになった。
< 181 / 246 >

この作品をシェア

pagetop