‡いとしきみ‡
「着いたよ」
 
 
そう言われ、ハッとする。
考え過ぎてて自分の世界に行ってしまっていた。
 
 
「お疲れ、ありがと」
 
 
そう伝えて、車を降りた。
 
 
先に行ってて、と言われ、俺とアキちゃんが先に入る。
久しぶりに来た稔の家は、何も変わっておらず、昔に戻ったみたいな感覚に陥(オチイ)った。
 
 
「お邪魔します」
 
 
靴を揃え、玄関を上がる。しばらくして、遠くから
 
 
「はーい」
 
 
なんて聞こえた。
見渡せば、家の匂いも、置かれている家具やテーブルも、何も変わってはいない。
 
ただ、やはり歳を取ったせいか、昔の様に図々しくはいられなくなった。
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