幕末異聞ー参ー
零章
――自分の正義に従って戦った
理想を現実にするために戦った
幸せな世界を造るために戦った
それぞれの信念が真っ向からぶつかり合った時代
後に幕末と呼ばれるこの時代
当時のある特定の組織に起きた出来事を事細かに記録した書物が発見された。
その著者はまるで自分たちを誇るように、後世の人間に存在を主張するようにそれを残して生涯を終えた。
その著者の名は永倉新八。
幕末時代において、会津藩に仕え、動乱の京都で目覚しい活躍を見せた新撰組隊士の一人である。
僕は彼の残した記録に大変興味があった。
いや、正確に言えば彼の書物に頻繁に現れる名前に惹かれたのだ。
赤城 楓
新撰組隊士名簿に載っていないこの名前。
実在したのかも定かでないこの人物に、僕は心を奪われた。
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