幕末異聞ー参ー


「伊東を参謀にしたことだ。
他の新入隊士たちはどんなに能力が高くても平隊士から始めてたのに、新しく参謀なんて役職を作って奴を迎え入れちまった。隊士の中には納得できねぇ奴も出てくる」


土方の言い分は正しかった。
参謀とは、正に伊東のために用意された役職だった。


「お前の言っていることは最もだ。だが、時代が動く中でどうしても伊東さんの力が必要なのだ。
解ってくれ。歳、山南」



「「…」」


文武両道、聡明、先導力という今までの新撰組にはなかった武器を持つ伊東は貴重な存在だ。

新撰組の弱い部分を補うにはどうしても伊東が必要になってきてしまう。


「もう、勢いだけではどうにもならないほど新撰組は大きくなった。柔軟な対応をしていかなければ…」



「…くそっ!」


それは少し前から土方も気づいていた。

頭ではわかっているが、心はどうしても今までの新撰組を貫きたいという思いが強くて身動きがとれなくなっていたのだ。




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