幕末異聞ー参ー


「土方!!どういう事や!?」

「納得いきません!!」


襖を派手に開け放ったかと思えば、断りもなく室内に息を荒げて殴り込んでくる不作法な者たち。


ここが鬼の副長の棲み家と知りながら、そんな無礼をする者など新撰組にはまずいない。
この沖田と楓という常識から逸脱した若者二人を除けば。


「…お前ら最低限の礼儀くらい知れよ」

さっきまでの落ち着きのなさが嘘のように、どっしりとした居住まいで無礼な二人を睨む土方。

「黙れ!あんたに尽くす礼なんて持っとらん!!それより何やあの隊分けは!?」

「そうですよ!山南さんがいながら何故あんな分け方になっちゃったんですか?!」

襖を閉めることも忘れて座っている土方と山南に詰め寄る二人。


「た…偶々だよ。いいじゃないか。二人とも部屋は隣同士だし、よく一緒にいるし。同じ組で今更困る事もないだろう?」

刀は持っていないものの、予想していた以上に迫力ある二人に、山南は押され気味だ。

「困りますよ!よく一緒にいるのは出会い頭に喧嘩をふっかけられて言い合いをしているだけです!!」

「ちょっと待ち!うちが何時喧嘩ふっかけた言うんや!?いっつも喧嘩売ってくんのはあんたやろ!」

「何でそうやって簡単に嘘がつけるんですか貴方は!すれ違う度に地味に脛蹴ってくる人の台詞じゃないですよ!」

「アホか!!自分の行動も覚えてられんのかこのボケナス男女!あんたがいっつも先に“猪は怒りっぽい”だの“真っ直ぐ以外にも走れるんですねー”だの言うからいけないんやろ!?」

「事実を言って何が悪いんですか!?」

「口減らずなお嬢さんやな!そんなんじゃ嫁ぎ先見つからんで!?」




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