幕末異聞ー参ー
頭が真っ白になった。
何故誠実なあの人が?
何故あんなに優しくて思いやりのあるあの人が?
切腹の原因を考えようとしても疑問しか浮かんでこない。
何故…
なぜ…信じられない。
あの笑顔もあの優しい腕に抱かれることももうないなんて…
「明里さん」
名を呼ばれて現実に引き戻された。
目の前には無表情の赤城はんがいた。
「私の言葉が山南総長を追い詰めてしまいました」
「…へ?」
この子が…山南さんを殺した…?
「確かにこれも立派な彼の武士道でありました。
しかし、私の無責任な一言がなければもっと違う結末があったのかもしれません」
この子が…山南さんを切腹に追いやり…苦しめた。