幕末異聞ー参ー
「遂に長州征伐が終わったがか?!」
「…」
「慎太郎?」
部屋に入ってきたときの激しい挨拶とは一変、中岡の顔はみるみる暗くなっていく。
「なんちゅうか…最低限で収まったっちゅー感じやな」
中岡は俯いて長州であったことを全て坂本に話した。
「ほがかぁ。禁門の変で長州藩の軍を率いて宮廷を襲撃した三家老を斬首して事を納めたか。
まあ、幕府側の西郷さんにしてみればなんの手土産なしに京に帰る訳にゃいかんちね。べすとな終焉じゃったんじゃなかか?」
「そうじゃな。無血で終われるとは思っとらんかったからの。三人の犠牲なら安いものかもしれんの」
坂本に手渡された饅頭を頬張ると、中岡は少し元気を出したように微笑する。
「そういえば西郷さんはどうしたんじゃ?」
「ああ。わしより一足早く京に帰ってきちょるぜよ。おまんに会いたがってたがよ!多分薩摩藩邸におると思うが…」
――ダン!
「ちょお行ってくるぜよ!!」
「え…?龍馬ー!?」
まだ報告することは山ほどあるのに、坂本は中岡を飛び越え急いで宿場を出ていってしまった。
「…はぁ。相変わらずじゃの」
中岡は諦めたように坂本の食べかけの饅頭を口に含んだ。