幕末異聞ー参ー
桂と別れ『すすき』を出た坂本はほろ酔い加減で中岡の待つ宿場まで帰った。
「慎太郎ぅぅ!やったぜよー!」
まだあてがわれた部屋に入っていないと言うのにろれつの回らない口で声を張り上げる。
「桂さんが西ご「こらっ!!」
誰が泊まっているとも知れぬ宿場で平気で秘密利に計画していることを暴露しかける坂本の口を慌てて中岡が塞ぎ、自室に引きずり込んだ。
「龍馬…頼むからもう少し緊張感ちゅーもんを持ってくれ」
「おーおー!すまんのぉ!」
当然、今の坂本に悪びれた様子など微塵もない。
「それより聞いて驚け慎太郎!薩摩と長州の同盟計画が復活するぜよ!」
「…なに?!そりゃまっことか?」
「今長州藩の桂さんと会って来たら西郷さんに会ってもいい言うとったがじゃ。
ここはわしらで会合の場を設けて両藩を会わせるしかないぜよ!」
「の――!!でかしたぞ龍馬!これで一歩前進じゃ!
後は二つの藩が同盟を結んで、わしらが薩摩の資金をうまく使って外国から武器を買い取って幕府を威嚇すれば…」
二人は鼻と鼻がくっつくほど顔を近づけ、同時ににたりとほくそ笑んだ。
「「徳川幕府の解体」」
現実味を帯びてきたその言葉に二人はコツンと拳と拳を付き合わせた。