幕末異聞ー参ー


「坂本どんは…大きなお人ですな」



「んあ?」



「おいは薩摩のことしか、いや、自分のことしか考えられん臆病者です。
こんなおいがこの薩摩をまとめられるでしょうか?」



「何を言うとるがじゃ西郷さん!西郷さんなら絶対できるぜよ!わしが保証する。それにわしは大きくなんかない。第三者だからこそこんなに身軽に動けるんじゃ。だから西郷さん。わしは大きく見えるだけで小さい人間なんじゃ」



西郷はこの時、自分と同じで坂本も恐怖や不安を抱えながら革命を起こそうとしていることを知った。


(坂本どんも戦っている)



西郷はぐっと奥歯を噛み締めた。




この日を境に、西郷は薩摩藩に対する幕府の征長命令の残忍さを説き、藩の反倒幕体勢の考えを改めさせた。



そして五月九日、ついに西郷は大番頭・一身家老組に任命された。



これで薩摩藩の薩摩・長州同盟の準備はほぼ整った。




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