幕末異聞ー参ー
「む…では、これはどうだ?腕の利く者たちを謁見の間に配置し、信用できるとなったら下がらせる」
どうしても門の外の人物が気になる松平公は、神保を説得しようと粘る。
「…なぜそのように奴らを気に掛けるのですか?」
一向に奥の間に向かいそうにない松平公を、困り果てた表情で見つめる神保。
「彼らは余の為に働いてくれている。話を聞かないほうがおかしくはないか?」
無垢な笑顔で神保に向かってくる松平公。
「……貴方という御方は…」
自分は正当な事を言っていたはずなのに、気が付けばうまく言い包められてしまった。
神保は松平公の底抜けの人の善さに苦笑するしかなかった。