幕末異聞ー参ー
磨き上げられた廊下を役人に付いて歩き、辿り着いたのは八木邸の大広間の二倍はあろう部屋。
井草の芳しい匂いが漂う畳に座るよう促された永倉は、非常に居心地悪そうにしていた。

「斎藤。俺たち信用されてねぇんじゃないか?」

「当たり前だろう。俺はてっきり予め訪問の旨を伝えているものだと思っていた」

永倉の隣に正座した斎藤は、部屋の隅々を見回した。
正方形の部屋の襖に沿って、等間隔に鎮座する屈強な男たち。皆、利き手には刀を握っている。


「し…書状なんか送ったって取り次いでもらえないと思って」

自分には敵意はないと強調するように、永倉は腰帯から抜いた刀をからだより少し遠ざけて置いた。

「無謀すぎる」

「いいだろ!?入れてもらえたんだから!」




――スス…


小声で言い争いをする二人の目の前の襖が静かに開いた。




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