幕末異聞ー参ー
「大体は理解した。つまり、現在の近藤は其方らが言う職務よりも地位を築くのに力を注いでいると。して、其方らは余に何を望む?」
ひとしきり二人の話を理解した松平公は神保の前に置かれた建白書を流し見た。
永倉は遂にこの時が来たと言わんばかりに、大きく息を吸い込む。
「はっ。恐れながら言わせていただきます。松平様から近藤局長に一言いただきたいのです」
「職務に専念しろと?」
松平公は眉一つ動かさない。
「はい。我々は、このまま近藤局長が増長し続ければ、今まで一丸となって育んできた組織がばらばらになってしまうと危惧しております。近藤局長という軸を欠いてしまえば組織はただの烏合の衆と化してしまいます!」
「うーん…」
熱っぽく語る永倉に、松平公は俯いて小さく唸る。
「だ、そうだ」
「「…?」」
俯いて唸っていたはずの松平公の声が急に明るく変化した。
永倉と斎藤は拍子抜けなその声に目を丸くする。