幕末異聞ー参ー
「何故某に無断で部外者を入れたのですか?!」
謁見の間へ通ずる襖が完全に閉じたのを皮きりに、神保は松平公の背中に詰め寄る。
「彼らは部外者などではない。同志だ」
神保の怒りから逃げるように歩く速度を早める松平公。
「殿は甘いのです!!人相が似ているだけの敵という可能性だって十分考えられます!」
「わかったわかった。今度から気を付ける」
「そんな軽々し「松平様」
またしても神保の声は何者かに遮られてしまった。
幅の広い廊下の曲がり角から会釈のまま現れた二人の男に、松平公は警戒もせず近寄っていく。
「土方、山南。余の責務は果たしたぞ」
「…土方?山南?!」
またしても此処に常駐する者の名ではない男たちと鉢合わせした神保は目が点になる。
「はっ!私共の都合にお力添えいただいたこと、心より感謝申しあげます」
「いや、このくらいどうという事はない。面を上げなさい」
立ったままもう一度深く礼をし、ゆっくりと上げられた頭部から姿を現したのは新撰組の鬼副長・土方歳三と仏の副長・山南敬助の顔だった。
「神保殿」
土方は神妙な面持ちで少し離れた場所にいる神保に声をかけた。