幕末異聞ー参ー
「此度の事に関しての責任は全てこの土方歳三と山南敬助にあります。私共が松平様に事前に建白書の事を話し、昨晩より先回りさせていただいていたのです。
松平様をお叱りになるのではなく、私共をお責めください。どんな罰も受ける覚悟でございます」
建前ではないと土方と山南の瞳が語る。彼らもまた新撰組に命を懸けた漢なのだ。
「…その心構えに免じて見逃してやりたい所だが、接触した人物が会津藩藩主である以上、何かしらの罰を受けてもらわねばなるまいな」
「神保」
間に挟まれて二人の会話を聞いていた松平公が静かに神保を睨む。
「この者たちに罰を与えることは余が許さぬ」
松平公には珍しい強い口調。藩主の命令とあっては、誰も口を出せない。
「土方、山南よ。この事は気にするでない。其方も早く皆の元へ行ってやりなさい」
「お心遣い痛み入ります」
松平公の器の大きさに心打たれつつ、山南は前を通り過ぎる二人が見えなくなるまで頭を下げ続けた。