幕末異聞ー参ー
原田の声に驚き、木陰で羽を休めていた雀たちが一斉に飛び立っていく。

「何やねん?八つ当たりすんな」

両耳の穴に人差し指を詰めた楓が苦い顔をして鼻息を荒くする原田を見上げた。

「八つ当たりされてんのは俺も同じだ!!文句ならこの馬鹿に言ってくれ!」

「馬鹿って…原田さん酷い!私は今すごく傷ついてるんですよ!?」


原田の物言いに不貞腐れた沖田が、桶の中の水をバシャバシャと足で飛び散らす。

「…激しく聞きたくないけど一応話聞いたる。左之助、どうした?」

敢えて原田の名を強調した楓は、あからさまに沖田と目線を合わせようとしなかった。

「楓…恩にきるぜ!実はな、こいつは今日江戸に発った近藤さんが護衛に自分を選ばなかったことが気に入らねーってんだよ」

何か言い掛けて開かれた沖田の口を、声が出る前に素早く塞ぎ込んで騒ぎの原因を楓に話す原田。

「ああ。そういえば局長は将軍の護衛と隊士募集の為に江戸に行く言うてたけど…今日やったんか」

顎に手を添え、一人で納得する楓に、原田は呆れていた。




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