幕末異聞ー参ー
「で?総司が不服言うてる護衛には誰が選ばれたん?」
何事もないように楓は先を求める。
「新八と九番隊組長の武田観柳斎、監察方の尾形俊太郎だ。俺から見ても重役の護衛には申し分ない奴らだと思う」
満足そうに頷き、腕を組んだ原田がまだ恨めしそうな顔をしている沖田をちらりと伺った。
「だって…おかしいじゃないですか!?局長が遠出をするときは、毎回一番隊が警護を任されるのに今回は永倉さんと武田さんなんて…」
(ふうん。そういうことか)
どんどん声が小さくなっていく沖田の言葉の中に、楓は答えを見出だしていた。
これは近藤流の信頼の証だった。
先日、永倉を始めとする数名が会津藩に建白書を提出した件で、新撰組の一部の信頼関係が綻んでしまった。
それに対して、近藤は謝罪の気持ちを込め、永倉に命を預けたのだ。
自分の命を預けることで、近藤は永倉を信頼しているという気持ちを表した。
(…つくづく不器用な連中やな)
言葉では皮肉る楓だったが、心の内は矛盾していた。