幕末異聞ー参ー
「…松本先生は信用できる医者です。日本の医学を牽引するか「そうじゃないんです、山崎さん!」
沖田は山崎が今どんな顔をしているのか、確かめるのが怖くなり固く目を瞑った。
「松本先生にはすごくよくしてもらっていますし、信用しています」
そこまで言うと沖田は言葉を詰まらせた。
「…山崎さん。これからする話は一切他言しないと約束してくれませんか?」
沖田の懇願に山崎の心は揺れた。
自分は近藤局長の忠実な配下であり、新しい情報が入れば速やかに洗い浚い伝える。それが新撰組の監察方としての仕事であると考えていた。
そんな山崎が、今手に入れようとしている情報は間違いなく近藤に報告しなくてはいけないものだろう。
(…しかし)
山崎は奥歯を噛み締めた。
「一切…他言しません。約束します」
山崎は隊士としてではなく医師として、友として沖田の条件をのむことを選んだ。
「恩にきります」
上体を深く折り曲げる沖田の姿に、山崎は微かに笑った。
町を行き交う人々に一度視線を移し、大きく息を吸った沖田は再度山崎を見る。