幕末異聞ー参ー
「あ…いや、そうじゃないんです!はは、実は新撰組に会津藩から隊医が派遣されることになりまして。今後はそちらの先生に診てもらうことになったんです」
「…え?」
一瞬、琴は身体に雷が墜ちたかのような衝撃に襲われた。
「じゃあ…こ…ここへはもう…」
喉が絞まって思うように声が出ないが、なんとか思い浮かんだ言葉を音にする琴。
「ええ。中谷先生には本当によくしていただいたので私も残念なんですが…」
顎のあたりを人差し指で掻きながら、沖田は眉を下げた。
「また改めて挨拶に伺いますが、その時会えるかわからないので。
お琴さん、短い間でしたけどありがとうございました」
――嗚呼…やめて
「あんなに綺麗な朝顔を見れて嬉しかったです!」
――そんな風に言わないで
「最近、京はまた物騒になってきていますので、気をつけてください」
――それじゃまるで…
「じゃあ、またどこかでお会いするまで」
――今生の別れの言葉じゃない…