幕末異聞ー参ー
「…泣かないでください」
「…え?」
手を伸ばせば届く距離にある沖田様の顔が溢れた涙で歪む。
「貴女は何も間違っていないのに何故謝るんですか?」
「だって…私は…」
一度流れた涙はもう止めることができない。
きっと今の私は醜い顔をしているだろう。内面と同じだ。
「私は…醜い女なのです。貴方様を変えた人にずっと嫉妬していました」
「私を変えた?」
「貴方様は例えるなら万華鏡。何かの力が加わると色も形も変えてしまう。そんな貴方様は今、大事な何かを見つけ大切にしたいという強い意志を持った優しい色をしています。私はその大事な何かに嫉妬していたのです…」
「大事な…何か?」
ほら、今だって私は貴方にそんな表情をさせる何かに嫉妬してる。
「お琴さん、申し訳ありませんが、私には貴女の言う大事なものに新撰組以外思い当たることがありません。いえ、この際私の話はどうでもいいです」
目から零れ落ちる涙は一向に止まる気配を見せない。お願い、これ以上醜い私を見ないで…